手作りステーキから“39円アイス”まで…地方コンビニの「食」戦略
昨年導入された「タスポ」(たばこ自動販売機用成人識別ICカード)の影響で、売り上げを伸ばしたコンビニ業界。大手チェーンでは“タスポ特需”で新たに開拓した顧客を囲い込むため、次々とサービス強化に乗り出している。値ごろなPB(プライベート・ブランド)商品の拡充や、ネット通販の受け取り・ATMサービスの強化、電子マネー・ポイントプログラムの刷新、など。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090601/1026661/
こうした大手の攻勢に対し、中小チェーンも黙ってはいない。特定の地域で絶大な勢力を持つ地方の有力チェーンは、ユニークな試みで大手と差別化を図っている。一体、何を武器に大手コンビニチェーンとの違いを打ち出しているのか。代表的な地方有力チェーンの取り組みを追った。
店内で“焼きとり弁当”まで作る
北海道の雄、「セイコーマート」
北海道を中心に1040店を展開する「セイコーマート」(うち100店は埼玉県と茨城県に展開)。同チェーンの強みは、値ごろな価格で販売される店内調理だ。大手チェーンが本格的に店内調理を手がける以前、実に15年も前から「ホットシェフ」というブランドで、店内調理を開始している。現在では1040店のうち、およそ半数の店舗に導入済みだ。
メニュー自体はオーソドックスなものが中心だが、カツ丼500円、親子丼420円、大きなおにぎり(鮭)160円と、価格は値ごろ。都心部の店舗ではビジネスマンや学生などの昼食、夕食ニーズを取り込み、賑わっている。加えて、「道内の離島や人口3000人の村などでも、食堂やスーパー代わりに使う人が多く、支持を得ている」(セイコーマート)という。
料理が冷えないよう、でき上がった弁当は専用ウォーマーの中に陳列。コンビニの主要客層は30~40代男性だが、セイコーマートでは女性客や50代以上も店内調理の弁当を購入していく(画像クリックで拡大)
ユニークなのは、セイコーマートのなかでも一部店舗で導入している「やきとり弁当」。店内で調理した焼きとりを、弁当形式で販売している。もとは北海道・函館の中小コンビニチェーン「ハセガワストア」(14店舗展開)の名物メニューだったが、セイコーマートがハセガワストアと業務提携したことで、セイコーマートの店内でも「やきとり弁当」を販売。現在、セイコーマートで「やきとり弁当」を提供するのは12店にまで増えている。排煙処理などの問題があるため、導入できる店舗は限られているが、それでも「やきとり弁当」を扱う店舗では、焼きとり目当てで訪れる客も多いという。
店内調理の弁当を販売するコーナーとは別に、焼きとり販売用のカウンターを用意。注文が入ってから焼き始めるケースもある。串が3本入った「やきとり弁当(並)」が500円、串4本の「やきとり弁当(大)」が600円。串だけでもさまざまなメニューを用意し、「豚串ねぎ間」なら3本で285円、5本で475円。いずれも、塩とタレを選べる(画像クリックで拡大)
セイコーマートのもう一つの強みが、オリジナル商品。加工食品や菓子、総菜など、約850品目にもなるオリジナル商品は、「どれも北海道の食材を中心に使い、味付けも北海道民好みに仕上げている」(セイコーマート)。北海道発で最近脚光を浴び始めたB級グルメ「ちくわパン」(具材にちくわを使った総菜パン)や、道内ではメジャーな「まめパン」(具材に甘納豆が入る菓子パン)も販売。今では主力商品になっている。
オリジナルパンの多くが98円。大粒の甘納豆が入った「しっとり豆パン」は、オリジナルパンのなかでも特に人気が高い(画像クリックで拡大)
オリジナル商品の多くは値ごろな価格設定。ローソンが低価格PB「バリューライン」で105円総菜を扱い始める前から、セイコーマートでは“100円総菜”を販売。焼きそばやナポリタン、さばの塩焼きやひじきの五目煮などが、どれも100円だ(画像クリックで拡大)
酒類も充実。セイコーマートオリジナルの500円ワインも人気を集めている(画像クリックで拡大)
オレンジの看板が目に付くセイコーマート。北海道内ならば、函館から稚内まで、さまざまなエリアに出店している(画像クリックで拡大)
地元人気店のステーキの味を再現
本格調理で差を付ける「ココストア」
グループ全体の総店舗数が1085店(09年4月末時点)にのぼる「ココストア」。もとは東海エリアを中心とした中堅チェーンだったが、関東地盤の「ホットスパー」や九州地盤の「エブリワン」を運営する企業を子会社化し、今では東海エリアを中心に、関東や九州、沖縄にも勢力を拡大している(九州では「ココストア」のほか、「エブリワン」の店名でも展開)。
ココストアが注力するのも、店内調理。1085店のうち、店内調理を実施するのは548店。うち316店では、店内で焼いたパンまで提供している(ココストア74店、エブリワン242店)。郊外店などでは、「祖父母と親子など、3世代で訪れるケースも多い」(ココストア)といい、既存のコンビニチェーンより客層が広いのが強みだ。
店内で作られた総菜や弁当、パンなどは専用売り場に並べられる。なかでも売れ筋は、「ばくだんおにぎり」。梅、シャケ、昆布など複数の具材が入った大ぶりのおにぎりで、「郊外のロードサイド店などでは1日に300個が売れることもある」(ココストア)という人気商品だ。メニューも「唐揚げ&ツナマヨばくだん」や、手羽先が有名な飲食チェーン「世界の山ちゃん」とタイアップした「世界の山ちゃんばくだん(スパイシー鶏マヨ)」(250円)などと幅広い。
店内の一角に、出来立ての総菜や弁当を並べるコーナーを用意。総菜とは別にパンコーナーも設け、来店客が増える昼食などの時間帯に、ちょうどパンが焼き上がるように工夫している(画像クリックで拡大)
人気商品「ばくだんおにぎり」の売り場。サイズは一般的なおにぎりの約2倍。調理スペースでスタッフが1つずつ手作業で握っている(画像クリックで拡大)
本格的な店内調理を生かしたユニークな弁当も開発する。例えば、期間限定で販売した「あさくま監修学生ハンバーグステーキ弁当」(650円)。名古屋の老舗ステーキ店「あさくま」が監修した弁当で、使っている肉やソースは「あさくま」と全く同じもの。「スタッフが焼き方などを『あさくま』で習い、コンビニ弁当向けにアレンジして提供している」(ココストア)。地元有名店とほぼ同じ味を、より値ごろな価格で楽しめる点が受け、売れ行きは好調だったという(現在は販売終了)。ココストアでは今後もこうした取り組みに力を入れ、大手コンビニチェーンとの差別化を図るという。
肉1枚を焼くのに7分程度もかかるなど、調理には手間がかかる。こちらもパン同様、込み合う昼食前の時間帯に焼き上がるように工夫している(画像クリックで拡大)
ピンクの看板が特徴のココストア。電子マネー「iD」に対応するなど、ほかの地方有力チェーン以上にサービス面の強化にも力を注いでいる(画像クリックで拡大)
39円アイスが1日500個売れた!
低価格路線を追求するセーブオン
値ごろなオリジナル商品で大手チェーンとの違いを訴求しているのが、北関東を地盤とする中堅コンビニチェーン「セーブオン」だ。同チェーンでは、本社のある群馬県を中心に、北関東や東北エリア(山形県、福島県)、中部エリア(新潟県、長野県、富山県)に566店を展開している。低価格路線の大型スーパー「ベイシア」やホームセンター「カインズ」などを持つベイシアグループの傘下にあるため、スケールメリットを生かした低価格商品が豊富にそろうのが特徴だ。
客の来店頻度を高めるために低価格商品を強化し始めたのが2002年。「毎日この価格」というブランド名で、食品や飲料、弁当など、購入頻度の高い商品を安く販売している。店頭を訪れてみると、豆腐48円、納豆3パック70円、牛乳1L155円など、確かに値ごろ感の強い商品がずらりと並んでいた。
なかでも売れ筋となっているのが、1個39円のアイスクリーム。発売当初の02年には、NB(ナショナル・ブランド)の商品を39円で販売していたが、爆発的な人気となり、現在では自社でも39円アイスを開発。品ぞろえを増やしている。「まとめ買いをする人が多く、アイスクリームを目当てに親子で買いに来るケースも増えた」(セーブオン)。多い日には1日に500個も売れる。
使用頻度の高い食品が、一般的なスーパー以上に安く並ぶ。納豆3パック70円、牛乳1L155円、食パン(8枚入り)98円といった価格は、大手チェーンの値ごろなPB商品よりもさらに安い(画像クリックで拡大)
39円アイスクリームの品ぞろえも充実。若い主婦層やシニア層など、幅広い客層を開拓している(画像クリックで拡大)
安さを追求するため、一部店舗ではユニークな試みも実施。賞味期限の数時間前になった商品には値引きシールを張り、販売を促進。「来店客にとってはお得感が強く、店側にとっては廃棄する商品が減らせる利点がある」(ベイシア)。実験店での展開がうまくいけば、ほかの店舗にも広げる狙いだ。ほかにも、文具や日用品などは、ホームセンターのカインズで展開するPB商品を販売。NB商品と並べて陳列することで、安さをアピールしている。
実験店でも「値引き商品」とわかるようにPOPで強調。値引きした商品を手前に並べることで、手に取りやすくしている(画像クリックで拡大)
衣料用洗剤は1kg198円。大手量販店のPBとほぼ同じ価格だ。文具や雑貨なども、カインズの格安PBを導入。こうした商品は大手コンビニチェーンでも定価に近い価格で販売されていることが多いので、安さがいっそう際立つ(画像クリックで拡大)
北関東を訪れると、目にする機会がぐっと増えるセーブオン。街道沿いの立地に出店するケースが多いという(画像クリックで拡大)
(文/日野 なおみ=日経トレンディ 写真/佐藤 雅彦、川柳 まさ裕)
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