~たまには上方修正してみたい~
調査課の主な仕事は、九州管内の経済・産業動向を調査・分析することですが、今年に入り様々な経済指標が弱い動きとなり、本年10月以降急激に経済が悪い方に向かっています。10月の鉱工業生産指数は3ヶ月連続して前年割れとなり、基調判断を「横ばい」から「低下傾向」に下方修正しました。九州全体の経済動向も9月は「概ね横ばいながら、一部に弱い動き」としていたものを12月に「後退している」と下方修正しました。各経済指標は前年同月比がマイナスとなったときは「▲」を頭につけますが、今の指標一覧をみると▲で真っ黒の状態になっており、どうしても気持ちが暗くなってしまいます。
そこで、明るい指標がないか、元気が出る数値はないかと探してみました。折角の機会ですので、経済産業省が扱う統計データを中心に以下ご紹介したいと思います。ちなみに書店では書籍の売上げが落ちている中で、「100年に1度の経済危機」などの“不況本”売れているという皮肉な話があるそうです。
http://www.kyushu.meti.go.jp/web_kan/webkan265.htm
(その1)
低下傾向となっている九州管内の鉱工業生産指数ですが、平成17年を100とした基準で10月は106.5となっています。この水準は全国の指数(10月102.3)に比べても高い水準にあり、各経済産業局が発表している地域別の指数の中でも九州は最も高い水準を5ヶ月連続して維持しています。ちなみに関東の指数は98.5、中部は101.7、近畿は101.1と基準年レベルまで低下しており、これらと比較すると九州の高い水準がわかります。これは近年の自動車産業や半導体産業などの積極的な設備投資により、九州の生産水準が底上げされていることによるものと思われます。
(その2)
鉱工業生産指数は17業種に分類されていますが、そのうち14業種が前年割れとなる中、最近でも高水準を維持している業種があります。それは電気機械工業です。全体からみればウエイトは小さいのですが、10月の指数水準は124.8で前年同月比11.0%増と5ヶ月連続して前年を上回っています。その押し上げ品目は太陽電池や風力発電機などで、これらの新エネルギー分野は着実に伸びています。
(その3)
このような生産水準の底上げ、裾野の広がりは、10月に発表された平成19年工業統計速報でもわかります。九州の工業出荷額は約23兆円で前年比8.5%増加しています。平成2年当時5.6%であった全国シェアは6.9%まで上昇しており、業種別にみると、輸送機械、食料品、電子部品・デバイスなどが牽引しています。また、県別にみると福岡県が最も出荷額が多く約4割を占めていますが、次に多い大分県は最近5年間で出荷額が1.5倍に増加しています。
(その4)
工業よりも全国シェアがもっと高いものが九州にあります。それは農林水産業です。平成18年の農業産出額は約1.6兆円で全国シェアは18.8%を占めています。特に畜産業は25%のシェアがあり、肉用牛は4割、豚は3割の高いシェアを誇っています。一方、漁獲量の全国シェアも14.4%と高く、あじ、さばは約3割、ぶり、いわし、まぐろは2割超のシェアがあります。また、養殖収穫量の全国シェアは26%で、養殖ぶりが67%、のりが46%、養殖まだいは22%の高いシェアとなっています。さらに林業産出額も18%シェアがあります。食の安全安心意識が高まる中、食料基地としての九州の役割は益々高まるものと思われますし、同時に全国的にみても九州は地域資源の宝庫と言っても良いと思います。
(その5)
サービス産業をみてみると、特定サービス産業動態統計によれば、リースや広告業などの対事業所サービスは軒並み厳しい数値となっていますが、対個人サービスの中で、今年に入り着実に前年水準を上回って推移している指標があります。それは「フィットネスクラブ」です。残念ながら九州のデータはないのですが、全国の10月の売上高は約250億円。前年同月比3.7%増で10ヶ月連続して前年を上回っています。10月の利用者数は1,740万人で同6.6%増加しています。私の家の近くにもフィットネスクラブが3カ所あり、やや乱立気味と思うのですが、健康志向の高まりやメタボ対策を背景に売上を伸ばしているようです。
(その6)
余談ですが、10月の九州のコンビニ販売額は、前年同月比12.7%増で9ヶ月連続して前年水準を上回っています。これは、ひとえにタスポ(taspo)効果が背景にあります。喫煙者でタスポカードを持たない人(私も)は自動販売機でたばこを買うことができず、コンビニでたばこを買う人が増えているようです。お菓子やビールなどのついで買いが発生し、より売上を伸ばしています。特にタスポ導入が早かった九州では5月以降10%前後の高い伸び率で推移しています。
以上、いくつかの参考となるような指標、数値を並べてみました。景気の先行き不透明感が増す中で、九州のポテンシャルをデータから改めて見直してみてはどうでしょうか。それにしても、私が調査課に来て1年半になりますが、最近の基調判断は下方修正ばかりしているような気がします。景気は循環するもので、これは巡り合わせと言ってしまえば終わりですが、たまには上方修正してみたいと思っているところです。
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